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本音の部分では、負担の増加に警戒が強まっている。
「なぜ日本だけが他国よりも負担をするのか」、「なぜ産業界だけが排出を抑制しろと責められるのか」といった当然ともいえる疑問がくすぶる。
だが、その不満は外にはあまり聞こえてこない。
自主行動計画の成果日本経団連は地球温暖化問題を放置していたわけではない。
一九九二年に、経済団体連合会(当時、経団連)は「経団連地球環境憲章」を決めた。
ここでは「環境問題への取り組みが企業の存在と活動に必須の要件である」との基本理念を掲げた。
さらに九七年に「経団連環境自主行動計画」を策定。
二○○二年に経団連と日経連百も目立たない。
なぜ、負担など京都議定書の負の部分が強調されなかったのか。
「孤立することが怖かった」とある財界人は説明する。
「京都会議当時は環境保護が至上のものとされる社会の雰囲気がありました。
京都議定書に疑問を示したら、マスコミや世論から袋だたきにあうと思ったのです」と萎縮した事情を話す。
経済界の中心である日本経団連は、環境問題について政策提言は行っているものの、意見表明やPRには積極的では本経営者団体連盟)の合併に伴って日本経団連(日本経済団体連合会)が発足したことにより、「環境自主行動計画」に改称された。
自主行動計画の目標とは、「二○一○年度に産業部門とエネルギー転換部門宕油の精製、発電などエネルギーを生み出す分野)からのCO2排出量を九○年度レベル以下に抑える」というものだ。
各業界団体ごとに結果を取りまとめ、フォローアップの形で毎年成果を公表する。
第六回(二○○二年度)では五○業種(産業三五業種、サービスなど一五業種)が参加。
日本のCO2排出量の約三割強をカバーする。
日本経団連の行動は六○,七○年代にかけての環境問題での成功例が念頭にある。
当時、悪化の一途をたどっていた大気や水質汚染、廃棄物問題が企業の自主的な取り組みで改善された。
国民から企業に向けられた批判が終息すると同時に、産業界の省エネ体質も強まった。
この時期に自主的な発案で低公害車を生み出し、世界企業に躍り出た本田技研工業と本田宗一郎氏の活動は、高度成長時代の伝説的な成功例として知られる。
第六回フォローァップをみると、効果は上がっている。
産業部門の参加三五業種(前年度より一業種増)のCO2排出量は、九○年度比一・九%減の四億八三七○万トンだ。
CO2が九○年度比で減ったのは二○業種、二○○一年度比で減ったのは一四業種だった。
ただ、東京電力の原子力発電所のトラブル隠しという不祥事が二○○二年夏に発覚。
再点検のため原発の稼働が段階的に止まり、火力による発電量が増えたため、二○○一年度比では一・八%の増加となった。
増加は三年ぶりだった。
産業界のCO2排出量の減少は、自らの努力による点であるにしても、九○年代の長期不況を一因とすることは疑いない。
そして、この自主行動計画には評価の一方で、批判がある。
京都大学の佐和隆光教授は著書の中で、競争激化の中で参入してくる中小の企業への規制がなおざりになることを指摘。
「(未来を考えれば)「倫理」と「自主」のみに委ねてすますわけにはいかない」と指摘している(注一)。
日本経団連は、自主行動計画の成果を強調し、加えて「日本の産業界は世界で最もエネルギー効率がよく、追加的な負担が困難なのによくやっている」と繰り返し主張する。
日本は一人当たりCO2排出量が米国の半分以下だ。
「これは石油ショック以降、産業界が行ってきたエネルギー効率化の努力の結果」と説明する。
実際にそうなのか。
日本政策投資銀行調査部の饗場崇夫氏は石油ショック以来の各産業のエネルギー使用量を調査。
また省エネルギーセンターが表彰した優秀な産業界の省エネ事例を分析した(注三・「確かに、日本の産業界におけるエネルギー効率は七○年代から八○年代にかけて一貫してよくなっています。
ただ、九○年代の改善は著しくありません」と饗場氏は語る。
これはデータから観察できるという。
この点では、日本経団連側の主張「自主規制措置は成果を上げています。
民生と運輸部門の伸びを放置して、産業界だけに過剰な負担を負わせる方向に政策が動くのは、理解に苦しみます」。
経団連の環境・技術本部の高橋秀夫本部長は強調する。
日本経団連が自主行動計画を始めた最大の目的は、過剰なCO2の排出規制措置を避けるためだ。
一部の産業はCO2の排出とは切り離せない。
電力は重油、天然ガスの燃焼が事業に必然的に伴う。
鉄鋼は酸化鉄の鉱石を火で溶解して鉄に加工するが、その中でCO2が発日本経団連の警戒は正しいようだ。
しかし、「それは国際競争に直面する鉄鋼、窯業、化学、機械などの物作りの産業でしか、明確に確認できません」とする。
サービスなどの国内型産業では、誇れるほどではないようだ。
また、省エネ事例を分析すると、機器の性能向上だけでなく、現場からの提案、改善によってもたらされた例が多い。
「日本企業の強みである『下からの提案』による改善がエネルギー分野でもみられます。
生産システムの細かな見直しによって、一段とエネルギー使用の削減が行える可能性もあります」と饗場氏は指摘する。
まだ、産業界が削減を絞り出す余地はあるかもしれない。
生する。
セメント、製紙など日本の基幹を支える素材産業も、生産過程の中でCO2を排出しなければならない。
第六回フォローアップによれば、電気事業連合会が三億四二○○万トン(注・電力配分前)を排出した。
次に日本鉄鋼連盟が一億八一三三万トン。
以下、日本化学工業協会、石油連盟、日本製紙連合会、セメント協会が続く。
特に産業界は、炭素税への警戒感を強めている。
石油連盟の渡文明会長(新日本石油社長)は、環境省が二○○三年に提案した形の環境税(炭素税)に断固反対の姿勢を示している。
三村明夫日本鉄鋼連盟会長(新日鉄社長)は「炭素税が仮に導入されれば、工程の一部を外国に移さなければならない」との懸念を表明した。
しかも、日本の鉄鋼、化学などの競争相手である米国が京都議定書から離脱。
また産業上のライバルになりつつある中国、インドなどの発展途上国が議定書上の義務を負わない。
炭素税やCO2排出の強制的な削減は、「日本の素材産業に日本から出ていけということと同じです。
しかも、日本企業が外国で工場を作れば、地球全体のCO2は減りません」(高橋本部長)との指摘がある。
産業界は経済の構造転換と不況による需要の低迷、そして国際競争の激化に直面している。
こうした中で、温室効果ガスによる負担増は経営を左右しかねない問題だ。
二○○三年二月一八日、日本経団連と小池百合子環境大臣は環境問題について意見交炭素税と規制の論議が先行する国内の状況に対しても、産業界には疑問がくすぶる。
日本経団連の高橋本部長は「なぜ『環境日本』を輸出するように政策の関心を向けないのでしょうか」と指摘する。
関西経済連合会(関経連)の秋山喜久会長(関西電力会長)は「日本のトップランナー方式の最良の機器を各国で使ってもらい、各国が日本並みのエネルギー効率を達成すれば、地球全体のCO2排出量が六割減ると、関経連は試算しました。
経済と環境は両立できます。
日本の有利な立場を世界に訴えるべきです」と語る。
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